阿藤玲『お人好しの放課後』『お節介な放課後』

阿藤玲(あとうれい)『お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険』(創元推理文庫 2017)『お節介な放課後 御出学園帰宅部の献身』(同 2018) 読。
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488483111
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488483128f:id:domperimottekoi:20190613053042j:plain

縁あって頂いた連作学園〈日常の謎〉中短篇ミステリー集。前者がデビュー作で後者がその続巻。各副題の通り御出(おいで)学園という高校の「帰宅部」に所属する個性豊かな仲間たちの青春群像を描く。帰宅部なる集団がれっきとした部活動を行なうクラブと認定されているのがミソで 有り余る放課後の時間を利して 学園の内外に湧き起こる様々な謎に挑む。…と言っても殺人等の重大事件を対象とするわけではなく あくまでも部員たちの好奇心の趣くままに任せられる。実のところ個人的にはこうした所謂〈日常の謎〉物とは必ずしも相性よからずなのだが… そのためもあってか両書其々で一番惹かれたのは やはり人の「死」という非日常的要素が関わる作だった──『お人好し…』では双生児を巡る謎が軸となる「左利きの月」『お節介…』では死者への書簡の秘密を解く「瑠璃色の手紙」。また単に好みによるのみならず 両作とも其々の集中で一番長く 且つ力も入っていると感じられたのも確か。とくに「左利きの月」は同書解説で佳多山大地が示唆しているように 作家 阿藤玲 デビューに際しての目玉とされた作品と思しく 作者の稟質が最も色濃く出ており 文章の随所にもひと際光るものがある気がした(その意味で『お人好し…』では本作を冒頭に持ってくるほうがよかったのではと思わせられなくもない)。一方『お節介…』では各作の間に幕間的な章が挟まれる等 連作集としての進化の跡あり。
『お人好し…』は発売間もなく増刷され(頂いたのは再版) 人気と期待を担いつつある模様。作者は女流の由。意外と?横溝正史ファンに相違ない記述多。
なお津田裕城による『お節介…』解説では両書担当編集者(※現在は「元」)某女史の功績と名伯楽ぶりについて触れられており 記録(or記憶)として貴重。

 

各収録作

『お人好しの放課後』──「小出君、夜歩く。」「たたかうにんじん」「左利きの月」「お姫様たちの文化祭」

『お節介な放課後』──「自宅部の彼」「さかさまバレンタイン」「瑠璃色の手紙」「マイナス十度のたなばた」(※「相川タツヤの備忘録」①~⑤もあり)

 

ここ ↓ で作者による「「ここだけのあとがき」に代えて」掲載。

 http://www.webmysteries.jp/afterword/atou1808.html

 

お節介な放課後 (御出学園帰宅部の献身) (創元推理文庫)
 

 

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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