クトゥルー神話誌『玉石混淆』3 シナリオ特集号

クトゥルー神話専門文芸誌『玉石混淆』第3号【特集クトゥルフ・シナリオ】(2019/6月刊 豚蛇出版)読。

f:id:domperimottekoi:20190618050327j:plain

創刊以来順調に継続刊行(1号、2号)中の同誌最新号。シナリオ特集だが「編集前記」(治田豪和)での「全てのシナリオ形式が対象」との宣言通りTRPGに限らずクトゥルフ系のあらゆる脚本 創案 設定メモetc…と広く採りあげているのがミソ。以下目次記載順に。

由良瓏砂「深き眠りの門を越えて」(演劇シナリオ)──実際に上演され 作者と同誌編者との出会いの契機となった舞台劇の脚本で 今号の目玉と思しい。ある種SF的な硬質世界観が魅力的。如何に具現化?…と思わす奇抜シーンも。
しゅたいなー「ラヴクラヴ」(ラジオドラマシナリオ)──ニャルvs猫姿ヨグ等ユーモラスさ満載。未演作。
新熊昇「アルハザードの娘」(ラジオドラマシナリオ)──こちらも猫活躍&作者得意のアルハザードが親子で登場するコメディ。未演作と思われ。
黒月蝶「吸血企画書」(小説設定覚書)──未完作「吸血ショゴスの呪い」の創案。執筆継続示唆。
鳳夢夜&豚蛇「小説「ゼロ次元の悪魔」製作資料」──本誌2号掲載 鳳夢夜「ゼロ次元の悪魔」の設定や方針を巡るメール交信録。ハードSFだけに精細極まる長尺の科学&医学考証談義に驚き(G・イーガン級?超難解)。物体X的リアル怪異が期待誘い 未完惜。
鳳夢夜&豚蛇「小説「パーシバルの心臓」製作資料」──同じく2号掲載作を巡る記録。D・ドレイク「蠢く密林」彷彿 完成希望。
千熊敦「女/新選組」(漫画原作シナリオ)──2号掲載「新撰組怪異譚」派生作(※選の字 異)。現/古混淆の奇想。
山嵐拓夢「1308017 8192787」(TRPGシナリオ)──人間の感情を喰らう〈確率邪神〉の設定ユニーク(但し難解)。
MONO「疑惑の多い料理店」(TRPGシナリオ)──作者はTRPGイベント主催者。楽しげ?な怪奇にニヤリ。
柄本和昭「真珠色の輝き」(TRPGシナリオ)──クトーニアン( ! )+〈山真珠〉の発想 快(怪)。小説化希望。
しゅたいなー「北方の伝説シリーズ」(TRPG素案)──絵付きオリジナル邪神群紹介。
以下2作は海外からの寄稿。本文英語につき一応目通すも 編者による日本語解説に頼る。
E・P・バーグランド「The Big Rock」(TRPG原案)──謎の巨岩奇譚。シナリオ未満の素案メモ。
カール・T・フォード「The Monstrosity at Machu Picchu」(TRPGシナリオ)──スチュアート・ゴードン( ! )教授率いる探検隊vs意外な邪神群(編者は一応ネタバレ注意としているが 本篇では冒頭から明かされている)。なお非常に残念にも 本誌刊行前に作者逝去の由。
以下 特集外作群。
黒月蝶「黒き男の墓標」(詩)──E・A・ポー+クトゥルフ讃。
鵺沼滑奴「鵺の沼」(小説)──拙作につき省。
新熊昇「ニトクリスの復活」(小説)──女王ニトクリス伝説+切り裂きジャック。傑作! 巧緻な展開&ツイスト流石。(因みにFGOで人気のニトクリスは『タイタス・クロウの事件簿』所収「ニトクリスの鏡」がある意味端緒と)
柄本和昭「歯車館の少女」(連載初回)──館+人形+少女 ゴスロリ的雰囲気 期待大。
to「【ones:a】」(イラスト)──独特画風のオリジナル邪神集 短詩付き。
「アレン・コスゾウスキーの怪物アート」(イラスト)──ゴジラ(?)を含む怪異像群。世界的著名神話画家の由。

特集作群では 広義のシナリオが集められ 諸分野相互比較&未完作想像の感覚が面白し(前号の断章特集に通ず)。個人的にはゲームシナリオ不慣れのため その方面些か難渋&不理解否めず忸怩。また同誌の特徴の1つに国際志向があるため 前号と同様 邦文作の英語による概略紹介&その逆(英語作の日本語紹介)を全てやらねばならない編者の苦労が偲ばれる。不出来な拙作許容には大感謝 何時か特集に参加叶うべく精進誓。

 

 


カール・T・フォード氏のご冥福を祈ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.