『幻想と怪奇2 人狼伝説 変身と野生のフォークロア』

『幻想と怪奇2 人狼伝説 変身と野生のフォークロア』(新紀元社 2020/5月刊)読。

http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-1824-9/

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古典小説群
ジョージ・W・M・レノルズ「人狼」……19世紀中葉の世界初長篇人狼小説『人狼ヴァグナー』抜粋(完訳予定)。
リーチ・リッチー「狼人間」……同じく19世紀の更に先んじる人狼短篇。ユーモラスな味わい。
アルジャーノン・ブラックウッド「ランニング・ウルフ」……カナダ舞台 この作家特有大自然観。
H・R・ウェイクフィールド「ある探検家の死」……アフリカの獣ハイエナの不思議と霊性
オリヴァー・オニオンズ「屋敷の主人」……インド魔術と犬の怪。以上5作 世界各大陸の人狼観差異に興趣。 

現代小説群
フリッツ・ライバー「魔犬」……大都会の日常の中での人狼
デール・C・ドナルドスン「ピア!」……誰が人狼か? ミステリ味&迫力アクション。野村芳夫氏発掘作。
ジェイムズ・ブリッシュ「闇はもう戻らない」……同じくウルフーダニット(?)+医学&オカルトの力作中篇。映画『スリラー・ゲーム/人狼伝説』原作。
ニーナ・キリキ・ホフマン「ゴミ箱をあさる」……現代人の荒んだ人間性と獣性。
ティーヴ・ラスニック・テム「おじいさまの画帳」……同じく現代での「老い」の象徴としての変身。終盤凄絶。
安土萌「老人とオオカミ」……奇しくもテム&ホフマン作品に通じる「家族」の荒廃と狼幻想。落ちにニヤリと。
井上雅彦「森になる」……「狼」の語を1度も使わない作者一流の詩的獣人譚。

エッセイ他
序文「変身と野生のフォークロア」(M筆)……ベアリング=グールドの研究書『人狼伝説』(人文書院)紹介/人狼イメージの意外な近現代性 示唆的。
野村芳夫人狼」……一般化前に「人狼」をwerewolf訳語とした荒俣宏氏の先見性/ケルーシュ『不死の怪物』ウィリアムスン『エデンの黒い牙』邦訳時の逸話。
藤原ヨウコウ「A Map of Nowhere 02:「人狼」のハルツ山地」……フレデリック・マリヤット「人狼」からの触発画。
澤村伊智「黄昏に立つ母は狼」……同じくマリヤット「人狼」の思い出と自身の未発表人狼小説について。
斜線堂有紀「昼に着るのはドレスがいい 夜にあるのは牙が良い」……映画『狼の血族』について。
植草昌実『図説 ヨーロッパから見た狼の文化史』……ミシェル・パストゥロー著書(原書房)書評。
菊地秀行「銀幕の人狼たち」……怪物映画蒐集第一人者へのインタビュー。作品紹介 流石の数量&充実度 フィルモグラフィー付き。
海外人狼小説リスト(編集部編)……既訳未訳総合の完璧網羅。

 

他 特集外書評『龍蜂集 澁澤龍彦 泉鏡花セレクションⅠ』(朝宮運河) / 今福龍太『ボルヘス『伝奇集』──迷宮の夢見る虎』(垂野創一郎) / 垂野創一郎『怪奇骨董翻訳箱──ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(植草昌実)

 

総じて傑作&名篇揃い。個人的には人狼物未読未見作多さに忸怩 ここを起点とすべしと認識新たに。 

幻想と怪奇2 人狼伝説 変身と野生のフォークロア

幻想と怪奇2 人狼伝説 変身と野生のフォークロア

  • 発売日: 2020/05/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

次号特集「平井呈一と西洋怪談の愉しみ」。

 

 

 

因みの蛇足 弊ブログ子の近年劇場観覧 ↓ 旧作狼男邦画2本。

『ウルフガイ 燃えろ狼男』(千葉真一 主演)  『狼の紋章』(志垣太郎 松田優作 主演)

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