『幻想と怪奇 14 ロンドン怪奇小説傑作選』読

『幻想と怪奇 14 ロンドン怪奇小説傑作選』(牧原勝志編 新紀元社 2023/11月刊) 読。

http://www.shinkigensha.co.jp/book/978-4-7753-2117-1/

装画 ひらいたかこ  装丁 YOUCHAN

新版『幻想と怪奇』シリーズ開始から旧版を超える13巻(他に別冊2巻)を経て今号より新機軸。「『幻想と怪奇』をより自由でより柔軟な想像力の場にするために」(巻末「not exactly editor」より)一段と多彩な企画を推進していく由、その第一弾として都市空間ロンドンの怪奇幻想を特集。

●巻頭「ロンドン怪奇小説地図」──古今名作群の舞台をロンドン地図で紹介するカラー口絵。
●H・R・ウェイクフィールド「アッシュ氏の画室(アトリエ)」(1932)──バッキンガム宮殿に近いロンドン最中心部の怪。謎の蛾群。
レティスガルブレイス「失踪したモデル」(1893)──王立芸術院に絡む絵画幽霊譚。
●シャーロット・リデル「ヴォクソール・ウォークの古い家」(1882)──ヴィクトリア朝貧民街の恐怖。
H・G・ウェルズ「白い塀の緑の扉」(1906)──大都市に潜む異界への扉口。
グレアム・グリーン「館内は無人」(1947)──映画館の奇譚。巨匠のショートショート
●ミュリエル・スパーク「名高き詩人の家」(1966)──駅に纏わる奇妙な話。不条理譚。
●トマス・バーク「街外れの奇跡」(1935)──不思議な力を持つ老人。皮肉な幕切れ。
●ロバート・エイクマン「哀れなる友」(1966)──国会議事堂を舞台とする珍しい政治怪談。力作中篇。
●J・D・ベレスフォード「霧の無人駅」(1918)──駅・霧・別世界を描く掌篇。
井上雅彦「緑の聖地」──異形のロンドン・ツアー。個人的注目は幽霊屋敷バークリー・スクエア50番地への言及。
●織守(おりがみ)きょうや「同居人」──実話風ハウスシェア奇談。作者はロンドン生まれの由。
●朝宮運河「乱反射するイメージ──日本におけるロンドン怪奇幻想文学の系譜」──漱石「倫敦塔」に始まり 青崎有吾『アンデッドガール・マーダーファルス』シリーズにまで至る和製倫敦幻想の潮流概観。

以上 1世紀近いスパンでの多様な切り口のロンドン物語群集成は壮観。新触発の源泉と期待。

特集外では──西聖(さとし)と粕谷知世の創作/朝松健の連作小説(今回より毎号)/斜線堂有紀の映画評(今回より毎号)/木犀あこの短篇小説評(新連載)/日向空海(うつみ)の評論/他 書評&情報欄も充実。個人的にはとくに粕谷作大正幻視譚に瞠目。


※今年刊行の弊ブログ子編『ロンドン幽霊譚傑作集』(創元推理文庫)は期せずして今号と同テーマ(但しヴィクトリア朝限定) 上記バークリー・スクエア50番地舞台作も収録。共々に請フ御贔屓!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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