『ナイトランド・クォータリー vol.17 ケルト幻想』

『ナイトランド・クォータリー(NIGHT LAND Quarterly) vol.17 ケルト幻想~昏い森への誘い~』(2019/5 アトリエサード) 読。

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巻頭カラーページ…井村君江コレクションを収める うつのみや妖精ミュージアム。/藤原ヨウコウ「夜の国の幻視録 その1」特集に沿うケルト風イメージ画2葉。

井村君江インタビュー …ケルト学に留まらず話題八方へ広がり とくに和製シェークスピア劇への厳しい苦言のくだりには畏怖。

深泰勉「ケルト妖精譚とホラー映画の微妙な関係」…海外ホラー映画群の奥に潜むケルト的幻想への示唆と実作紹介多数。個人的にはとくにイギリス怪奇文学における吸血鬼の淵源論が参考に(古典吸血鬼傑作集企図中につき)。

同じく深泰勉「アイリッシュミュージックの歌姫の浸透と拡散」…ケルト音楽紹介。全く疎い分野だが 唯一往年ENYA来日時TV歌唱視聴の記憶。

朝松健「深き森の闇より──ケルト文芸復興・魔術結社・幻想作家を巡る装飾的夢想」…A・マッケン作品訳載と併せての論考で ケルト~魔術~マッケンと連なる鉱脈への誘いが刺激的。論者としての朝松健 躍如。

岡和田晃「アーサー・マッケンから流れる、ケルト精神の水脈──「パンの大神」、『翡翠の飾り』、ヘレン・マクロイ『牧神の影』」…ミステリー等他分野へのマッケンの影響紹介が目鱗(「黒の碑」比較には秘かに感謝)。同筆者(新編集長の由)による多岐ブックガイドも充実。

徳岡正筆「Hellblade:Seuna's Sacrifice──「闇」と戦うピクトの女戦士が歩む、復讐と幻想の旅路」/「ボードゲームケルト」レビュー──ドイツの数学者が幻視したケルトとは」…ゲーム2種紹介。無知な分野乍ら惹かれるものあり。

いわためぐみ「カナザワ映画祭が池袋で「大怪談会」を開催!」…クトゥルー怪談を含む企画告知(※既に催了)。

以下 内外短篇小説。

アーサー・マッケン「変容」…名作新訳。魔としての妖精の怪異。/ ピエール・コムトウ「幻の巻狩」…現代作家によるマッケン&ウェールズ的恐怖。/ ジェレマイア・カーティン「聖マーティン祭前夜」…アイルランド民話の生々しいグロテスク味。/ ジェフ・C・カーター「かかる警句のなきがゆえに」…ローマ史+クトゥルフ神話!〈大陸ケルト〉作例。/ デイヴィッド・テラーマン「木の葉のさだめ」…イギリスの土俗と詩情。某賞受賞。/ リサ・L・ハネット「食べさせてあげなきゃ」…シュールな漁村奇譚(インスマス風?)。/ アンジェラ・スラッター「赫い森」…逸脱と奇想のケルティックダークファンタジー。/ 橋本純「いつか野に咲く麦になるまで」…『百鬼夢幻 河鍋暁斎 妖怪日誌』の作者による ガリア戦記に材を採る大陸ケルト幻想。『豊饒の海』にも一縷通じそうな転生譜。/ 松本寛大「ケルトの馬」…ケルト古代地上絵からの触発に現代テロリズムまで絡めた異色篇。作者 諸分野進出俊英の由。

浅学ゆえに漠然としたイメージのみだった〈ケルト〉について何がしかの肌触りを得られた感 収穫。 

ナイトランド・クォータリーvol.17 ケルト幻想〜昏い森への誘い〜

ナイトランド・クォータリーvol.17 ケルト幻想〜昏い森への誘い〜

 

 

同誌新号(vol.18 特集 想像界の生物相)近々刊行の模様。.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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